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クラスを超えたパフォーマンスに大注目!!『 DALI OBERONシリーズ 』

2019.5.1

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、お手頃な価格とクラスを超えたハイクオリティ・サウンドを実現した『 DALI OBERONシリーズ 』を取り上げます。

■DALIのスピーカーについて


DALIは1983年、ピーター・リンドルフによりデンマークに設立されました。

同社は、北欧を代表するAudio Nordグループのスピーカー製造・販売部門で、DALIの名称は「Danish Audiophile Loudspeaker Industries」に由来します。欧米では、ハイエンドスピーカーブランドとして確固たる地位を築いています。

DALIは「オーディオ装置の存在を感じさせずに、もっと気軽に音楽を心から楽しんでもらいたい」という願いから、「Musical Emotion(音楽の豊かな感情)」を標榜し、研究開発をスタートしたといいます。

周波数特性を重視するだけではなく、位相特性にも着目し、ドライバーユニットとネットワーク回路の完全なマッチングを図るべく、一体となって開発。信頼性のあるパーツと確かな技術で入念に作り上げられ、低損失を実現したのです。

また、フラットなインピーダンス特性は、急激な負荷変動を与えない「アンプにやさしい」設計ともいえます。

そのDALIのスピーカーで、2011年の発売以来、世界規模でベストセラーを続けてきたエントリーモデルでもある「ZENSORシリーズ」(一説には日本国内での累計販売台数が10万台を超えたとか)は、オーディオ業界では珍しい7年以上も人気を保った希有なシリーズでした。

しかし、遂にフルモデルチェンジすることになったのです。

その後継である『 OBERONシリーズ 』は、「ZENSORシリーズ」のパフォーマンスを大きく上回るべく、DALIが創業以来35年に渡り培ってきた様々な技術的ノウハウを注ぎ込み、お手頃な価格とクラスを超えたハイクオリティ・サウンドを実現したのです。

『 OBERONシリーズ 』のラインナップは、ブックシェルフ型『 OBERON1 』『 OBERON3 』の2機種、トールボーイ型『 OBERON5 』『 OBERON7 』の2機種、センタースピーカー『 OBERON/VOKAL 』の1機種、そして今回新しく追加された壁掛けスピーカー『 OBERON/ONWALL 』の1機種で、全6機種です。

これらのラインナップにより、2チャンネルの純粋なハイファイ用としては勿論のこと、音質重視のホームシアターでの複数チャンネルのスピーカーに使用することで、音色の一貫性も図れたのです。

それでは、『 OBERONシリーズ 』で採用された技術を順に見てまいりましょう。

■SMCマグネット・システムを採用したウーファー・ドライバーを装備


2012年発売、DALIの最上位機「EPICONシリーズ」で初めて採用し、その後下位モデルに順次採用されてきた「SMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)磁気回路」のウーファーが、このクラスで初めて採用されました。

SMCはコンパウンド状の砂鉄一粒一粒に科学的コーティングを施すことで電気的な絶縁性を確保し、電流歪を極限まで抑えたものです。

▲ウーファー内部の磁気回路

ウーファーユニットのポールピースの一部にSMCを使用することで、磁気回路内部で発生する磁気変調と渦電流を低減し、結果として1kHz付近の低い帯域の耳につきやすい3次高調波歪を10dB前後も改善でき、高音質化を実現できたのです。

このSMCこそ、DALIのスピーカーメーカーとしての地位を確固たるものにしたとも言える技術です。(「EPICONシリーズ」ではボイスコイルの外側にもSMCを採用しているとのことです。ここはやはりコスト面からでしょう。)

■4層巻CCAWボイスコイルを採用


「ウーファーの駆動力強化のため、4層巻ボイスコイルを搭載。ただ、4層巻ボイスコイルは駆動力が向上する一方で、重量が増加し、中音域の特性が劣化する可能性も否定できません。そのため、従来より軽量なCCAW(銅被覆アルミニウム線)を採用することで、駆動力と音質向上の両立を果たしたのです。(ONWALLモデルのみ、2層巻ボイスコイル)

■ウッドファイバー・コーン・ウーファー搭載


ウーファーの振動板には、DALIのトレードマークともいえるウッドファイバー・コーンを採用。均等な振動特性を持っており、偏った振動を抑えることで、正確かつナチュラルな音質を実現できたのです。この振動板は、高分子パルプと木の繊維(細かく砕いたウッドファイバー)を配合した複合素材で、表面にはクリアコートを施しています。エッジのラバーにもリニアで微妙な動きに対応する「ローロスタイプ(良く弾む)」を使用しています。

これにより、炸裂するようなハイレベルなサウンドから、微小な信号に至るまでリニアに反応します。『 OBERON3 』『 OBERON7 』には7インチ(180mm)ウーファーを搭載。通常、(「EPICONシリーズ」などの上位機)使われる6.5インチ(165mm)ウーファーよりも約15%ほど広い表面積を持つため、よりダイナミックな再生が可能となったとしています。

■すべてのモデルに大口径29mmツイーターを採用


「EPICONシリーズ」では、29mmソフトドーム・ツイーターが新開発されましたが、『 OBERONシリーズ 』では、専用の29mmの超軽量シルクファブリック(絹織物)ツイーターが新規に開発され、全モデルに搭載されています。

▲ツイーターの内部構造

前作「ZENSORシリーズ」をはじめ、一般的な25mmのツイーターより大口径にすることで、大入力が可能で、従来より低い周波数帯域までカバーできたのです。

前述のSMCとの相乗効果で、ウーファーとの繋がりがよりスムーズになったとしています。これにより自然でバランスのとれた均質な中音域再生を実現できたのです。

ポールピースの上部にはソフトフェルトのアブソーバーが装着されており、このダンピング素材を追加することで、従来の簡単な構造のツイーターに使われる平坦なポールピースから生じる不必要な音の反射を抑制したとしています。

また、取付部にはワイドな拡がりを実現する新型ツイータープレートを装備しています。

■高剛性MDFエンクロージャー


エンクロージャーには従来機より強化された内部補強構造をもつ、高剛性MDFエンクロージャーを採用しています。内部の吸音材は2種類のものを使用(「ZENSORシリーズ」は単一素材)しており、モデルや配置箇所に応じて最適化しているとしています。

また、よりストレートな低域再生を実現するため、『 OBERON/VOKAL 』を除き、リアバスレフ・ポートを採用(「ZENSORシリーズ」はフロント・ポート)し、さらに『 OBERON1 』『 OBERON3 』『 OBERON5 』『 OBERON7 』のポート開口部を拡がりのあるフレア形状とすることで、エアフロー(空気の流れ)を改善し、ノイズの低減も図れたとしています。

■洗練されたデンマーク・デザインを採用


外観は大幅に刷新され、キャビネット・カラーは、ダークウォルナット(DW)、ブラックアッシュ(BA)、ライトオーク(LO)、ホワイト(WH)の4色展開となりました。

DWやBAのモデルはより精悍な外観へ変貌、新しく追加されたLOやWHのモデルはより洗練され、よりスタイリッシュになりました。

フロントグリルのデザインは4隅をラウンドとした斬新なものとなり、DW/BAのモデルにはシャドウブラック、LO/WHにはマウンテングレイのグリルが標準装備されています。

フロント・バッフルは、ブラックとホワイトともに、よりインテリアにマッチする、マット(艶無)仕上げに変更されました。

トールボーイ型の『 OBERON5 』『 OBERON7 』に標準装備された、不要な振動を抑制するアルミ・ベースも、従来よりエレガントなデザインになっています。なお、リアの入力端子は全機種シングル仕様となっています。

▲アルミ・ベース

▲シングル仕様の入力端子

■ 『 OBERONシリーズ 』のサウンドを日本橋1ばん館でじっくり確認しました。

(日本橋1ばん館には『 OBERON1 』『 OBERON3 』『 OBERON5 』『 OBERON7 』が展示されています)


試聴室の中では高さ27.4cmは想像以上に小さく、本来の意味でのブックシェルフ型といえる寸法です。

しかし音を出した瞬間、「本当にこのスピーカーが鳴ってるの?」と思ったくらい低域がしっかりしており、量感も十分感じさせてくれました。特に、滑らかで自然なボーカルは、大型の高級機種でも難しいのではと感じました。

デザインも前作の「ZENSORシリーズ」より高級感があり、サウンドも落ち着きがあり、奥行き表現は明らかに上回っていました。クラシックにも十分対応できる貴重な小型スピーカーといえます。

『 OBERON1 』より一回り大きい、標準的なブックシェルフ型です。中域は更に充実し、低域の量感も見た目以上にしっかりしたものでした。

やはり大きさからくる余裕を感じさせ、さらに躍動感が出て来て、ジャズやポップス系の快活さも十分味わえます。ベースやピアノは力強くなり、オールマイティにどんな音楽でも楽しめそうです。

『 OBERONシリーズ 』の中では最もお買い得感のあるスピーカーです。小型トールボーイで場所を取らず、置き台も標準装備されていて、使い易いスピーカーです。

さすがにブックシェルフ型より更に低域が充実しています。全体にバランスが良く情報量も多いのですが、決してモニター的にさらけ出すタイプではなく、音楽の美味しい部分を上手く引き出してくれ、DALIのセンスの良さが感じられます。

さすがに大型だけあって量感たっぷりで、音楽を朗々と聴かせてくれます。超低域から超高域まで実にスムーズに伸び、密度感も十分感じさせてくれます。中高域の艶やかさや滑らかさはDALIの本領発揮と言った印象です。音場は広く深く透明で見通しが良く、スタジオの空気感まで感じられる程です。この完成度でこの価格は値頃感を感じます。

■最後に


『 OBERONシリーズ 』を聴いての筆者の印象は、そのC/Pの高さです。

前シリーズ「ZENSORシリーズ」との価格差はほんの僅か(『 OBERON5 』はペアで2,000円アップ)なのにも関わらず、オーディオ的にも意匠的にもかなりブラッシュアップされたと感じました。

「ZENSORシリーズ」の元気に張り出すタイプの音と違い、落ち着いたオーディオ的魅力を感じさせてくれるハイレベルな仕上がりのスピーカーでした。

デザインも上品なもので、北欧メーカーの落ち着きやセンスの良さを感じさせてくれました。日本家屋にもピッタリです。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)