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LUXMAN『 D-03X 』は”CDソフト愛好家”の救世主!

2020.8.21

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、数あるCDプレーヤーの中から、LUXMAN MQA-CD対応プレーヤー『 D-03X 』を取り上げます。本機は、発売当初に一度レポートしていますが、改めて音質を含め詳しくレポートしてまいります。

■今CDプレーヤーでの音楽再生をお勧めする理由


オーディオ市場でのCDプレーヤーの動きがあまり芳しくありません。理由として色々考えられますが、とにかくCDプレーヤーについての話題が少ないのが最大の原因だと思います。ESOTERICやAccuphaseなどのハイエンド機には底堅い需要はあるものの、20万円台〜30万円台のいわゆる中級機に話題の製品が少ないのです。

アナログブームが去り、PCオーディオにも最近目立った動きがなく、話題の中心はもっぱらネット配信やストリーミングばかりで、音楽がファイルという目に見えないものになるにつれ、音楽からの距離も離れていっているのではないかと危惧しています。そして音楽自体の価値まで下がってしまっているのではと感じてしまいます。

しかもファイル音源を聞くためのハードにしても、デジタルオーディオプレーヤー(DAP)+ヘッドフォンやスマートスピーカーなどが一般的になってしまい、日常的にはこれで十分との認識になってしまい、どうしても安易な方向に流れがちです。

音楽ソフトが有形なものから無形になったのと同時に、CDプレーヤーやカセットデッキに象徴される複雑なメカニズムが不要になったことで、音楽再生へのこだわり、特に再生機器へのこだわりが急速に薄れ、CDプレーヤーの需要減退に陥ったのだと思います。

一方で、PCオーディオやネットワークオーディオには、オーディオの知識以外に、グレードを追求すればする程、パソコンに関連するスキルが必要になってしまいます。結果、本来の音楽を楽しむと言う方向とは全く違う、未知のパソコン用語に追いつめられ、断念してしまったオーディオファンも多いのではないでしょうか。

確かにPCオーディオやネットワークオーディオの利便性は私も認めます。でもその便利さ故の感動は恐らく最初の一瞬だけだと思います。やはりいい音で聴いた時の感動の方が遙かに勝ります。自分の好きな音楽を、こだわり抜いたオーディオシステムで聴くのが一番だと考えるのは、私一人ではないと思います。

私が、今CDプレーヤーでの音楽再生を改めてお勧めする理由は・・・
 (1)内蔵のD/Aコンバーターが、素子の進歩により従来製品に比べ格段に良くなっている。
 (2)CDプレーヤーの設計に、デジタルノイズ対策の新しいノウハウが活かされている。
 (3)過去のCDライブラリーを改めて聴き直すと、その音質の良さにビックリすることがある。
 (4)MQA-CDの登場で、CDプレーヤーでもハイレゾ再生が可能になった。
 (5)アクセサリーやケーブル等で音質を向上させる対策を施すことができる。
 (6)何よりジャケットやケースを含めた形のあるソフトである。

■ 『 D-03X 』の充実度&完成度


前作に当たる「D-05u」がSACD対応メカを搭載していたのに対し、『 D-03X 』はCDのみに特化した新型高信頼性のCD専用メカを搭載しています。後述しますが、内蔵DACは、SACDを遙かに超えるDSD:11.2MHzに対応しているのにもかかわらずです。

LUXMANとしては、SACDソフトの現状を鑑み、CD再生に特化し、その上でMQA-CDを含むMQAデータの再生を可能とすることで、ディスクとデータ両方でのハイレゾソフトに対応することにしたのだと思います。この決断の結果、コストを大幅に抑えることができたのです。(個人的には、この英断に拍手を送りたいと思います。)


そのCD専用メカは、一般的なCDプレーヤーで見られる中央配置ではなく、向かって左側に有り、あえてシンメトリー構造を避けています。これは筐体内のデジタル信号やアナログ信号の理想的な流れから来ているそうで、ケーブルの余計な引き回しが無く最短で結ばれ、同時にノイズからも逃れられます。さらに振動の経路や重力バランスまでも考慮しているそうです。

CDメカは、定評のある8mm厚の無垢アルミ製のメカベースと、ループレス構造のシールド付きボックスシャーシで構成されており、上部には新しくスチール製のトッププレートを加えた最新仕様となっています。これらの対策の結果、安定した信号の読み取り精度と、動作音を下げることで静音性を実現できたのです。シャーシ全体もアースループやデジタルノイズを回避するため複合構造を採用しています。

ドライブメカの奥には電源トランスがあり、中央部では、デジタル/アナログ/コントロールそれぞれの回路に、大容量のブロックコンデンサーによる余裕のある電源供給を行っています。

DACチップには、同社では使い慣れた32bit対応のTI社製「PCM1795」を各チャンネルあたり2基使用し、モノラルモードで動作させています。高性能なDACを余裕を持たせて動作させることで、デジタル信号に刻まれた情報を高精度かつ高精細にD/A変換することで、音楽のもつ魅力を引き出せるのだとしています。

本機はCDプレーヤーであり、本格的なUSB-DACでもあります。USB入力では最大PCM:348kHz/32bit、DSD:11.2MHzにまで対応。さらに話題のMQAにも対応しており、MQAはファイル音源だけではなく、MQA-CDにも対応しています。また、USB入力は一般的なアイソクロナス転送方式以外に、PCに対する処理負荷を低減するBulk Pet転送モードにも対応しており万全です。

D/Aコンバーターに続くアナログ回路は、モノラルモードで動作させたDACの差動出力を、完全バランス構成のI/V変換回路へ入力しローインピーダンス化することで、終段のロー・パス・フィルターアンプを強力にドライブしています。

フロントパネルには、デジタル入力切替や出力の位相切替を装備。ディスプレイ内のMQAインジケーターは、MQA-CDとMQAファイル再生時に、青(スタジオ)、緑(オーセンティック)、赤紫(レンダラー)の3色で表示されます。

アナログ出力は、18mmピッチの金メッキRCA端子とノイトリック社製XLR端子を装備。デジタル入力は、DSD/PCM信号に対応したUSB、COAX/OPT各1系統(PCM:192kHz/24bitまで対応)を装備しており、デジタル出力はCOAX/OPT各1系統です。

付属リモコンは、フロントパネルの精緻なブラスターホワイトと同様の仕上げのズッシリと重いアルミ製で、リモコンを使うことで、ディスプレイの文字のズームアップやディマー機能なども行えます。

■試聴(日本橋1ばん館CDプレーヤーコーナーで実施)


試聴での第一印象は鮮度感と躍動感です。それに加え、LUXMANならではの品の良さや安定感のあるサウンドです。決して腰高ではなく、低域はレンジが広く解像度を落とすことなく深く沈み込みます。

S/Nは水準以上でとにかく静かで見通しがよく、音場は奥行き方向に拡がり空間表現が抜群です。楽器の倍音も十分に再現され、特に弦楽器がリアルに響きます。

ボーカルは温かく滑らかで、人肌を感じさせてくれます。突っ張り感やきつさの感じない穏やかな女声ボーカルが印象的です。特に、井筒香奈江のボーカルは自然でいつまでも聴いていたくなるほどでした。

MQA-CDではさすがにレンジが拡がり、サウンドに厚みも加わって中高域の伸びやかさは圧倒的です。CDとは違う高解像度サウンドが魅力的です。南佳孝のMQA-CD「Dear My Generation」の声と雨音の自然さは抜群でした。

■ 最後に…


LUXMAN『 D-03X 』は、あえてSACDに対応せず、DACも使い慣れたものにすることで、アンプ回路の強化やサウンドの熟成に注力できたことで、価格を超えたCDプレーヤーとなったのです。更に、MQAデコード回路にもコストをかけ、CDソフトのみならず、ファイル音源によるハイレゾ再生も強化できたのです。

CDはもちろん、USB-DAC、MQAファイル再生など、いずれも高度な使いこなしが可能な中級機であり、CDプレーヤーやUSB-DACとしての完成度はハイエンド機に迫るものがあります。CDを含むデジタルオーディオが存分に楽しめる”デジタル・メディアプレーヤー”とも言えるCDプレーヤー『 D-03X 』です。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)