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最高峰の性能と音質を誇る、アキュフェーズのプレシジョン・プリアンプ『 C-3900 』

2020.7.13

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、アキュフェーズ《 創立50周年記念モデル 》第二弾! プレシジョン・ステレオ・プリアンプ『 C-3900 』をピックアップ。

同社がこれまでに培ったプリアンプのノウハウを集大成。機構・回路両面に最新技術を導入し、部品類全ての見直しと試聴の繰り返しを行い、妥協のない技と感性で、”最高峰”の性能と音質を誇るフラグシップ・モデルを完成させました。

それでは『 C-3900 』が”最高峰”たる所以を具体的に見てまいりましょう。

■アキュフェーズのフラッグシップ・プリアンプの歴史


アキュフェーズのフラッグシップ・プリアンプの歴史は、日本の、いや世界のプリアンプの歴史と言っても過言ではありません。以下の表をご覧下さい。


型番 発売年月 税別価格(円) ボリュームの種類
C-280 1982.12 680,000  
C-280L 1987.02 640,000 精密4連ボリューム
C-280V 1990.12 800,000 CP素子4連ボリューム
C-290 1993.11 880,000 CP素子4連ボリューム
DC-300 1996.11 980,000 デジタルボリューム
C-290V 1998.12 980,000 CP素子4連ボリューム
DC-330 1999.11 880,000 デジタルボリューム
C-2800 2002.07 1,100,000 AAVA方式ボリューム
C-2810 2006.06 1,150,000 AAVA方式ボリューム
C-3800 2010.07 1,700,000 Balanced AAVA方式ボリューム
C-3850 2015.06 1,800,000 Balanced AAVA方式ボリューム

最初の「C-280」はフォノイコライザーを搭載し、レコード再生を重視した純粋なアナログ・プリアンプでした。その後「C-290」になって、フォノイコがリアパネルに増設するオプション方式(アナログオプションボード)とした、アナログライン専用プリアンプとなりました。

その後併売で「DC-300」「DC-330」というデジタル・プリアンプが投入されていますが、主力とはならず、2002年の「C-2800」以降「C-2810」までは専用フォノイコ・ユニットはオプションで、完全なアナログ・ライン専用プリアンプでした。

しかし「C-3800」からは、そのオプション方式を止め、完全なライン専用プリアンプとなり、レコード再生には別売のフォノイコライザーが必要になりました。

アキュフェーズとしては、オーディオの主流がデジタルになったのは勿論ですが、フォノイコはプリには同居させず、レコード再生を極めるには専用フォノイコで、とことん追求して欲しいとの明確な意思を示したとも言えます。

この流れから、今回取り上げる最新の『 C-3900 』も完全なアナログ・ライン専用プリアンプとなっています。

■進化した《 Dual Balanced AAVA 》を搭載した『 C-3900 』


本機の最大のトピックは、フル・バランス構成〈Balanced AAVA〉を2回路並列駆動する《 Dual Balanced AAVA 》を新たに開発し、前作「C-3850」に比べ、ノイズ・レベルを約30%減少させたことです。

プリアンプの音量調整機能は、オーディオ機器の中でも特に高度なアナログ回路の設計技術が必要であり、音質を左右する最も重要な回路です。

アキュフェーズでは、2002年発売の「C-2800」(上表参照)で、従来の概念を覆し、可変抵抗を使わずにボリュームをコントロールする〈AAVA:Accuphase Analog Vari-gain Amplifier〉(図1)を開発しています。

〈AAVA〉は可変抵抗体(抵抗が雑音の元)を音楽信号が通らないため、インピーダンスの変化による影響を受けることがなく、高いSN比と低い歪率を維持したまま音量を変えることができます。また、可変抵抗体の接触面の劣化に影響されないため、初期性能を長期に渡って維持できる高い信頼性を兼ね備えています。

初期の〈AAVA〉は(図1)に示すように、バランス入力⇒アンバランス出力で構成されていました。〈AAVA〉の誕生から8年後の2010年、平衡型の〈AAVA〉である〈Balanced AAVA〉(図2)を開発し「C-3800」に搭載しています。〈AAVA〉を2回路平衡駆動することで、バランス入力⇒バランス出力の「フルバランス構成」としたボリューム・コントロールです。

そして〈Balanced AAVA〉の誕生からさらに10年となる2020年、並列型の〈Balanced AAVA〉である《 Dual Balanced AAVA 》(図3)を新たに開発し『 C-3900 』に搭載したのです。

《 Dual Balanced AAVA 》は〈Balanced AAVA〉を2回路並列駆動することで、ノイズ成分を1/√2つまり約70%に減少させる技術で『 C-3900 』では理論通り約30%の大幅なノイズ削減に成功したとしています。

なお、〈AAVA〉が電圧信号を16種類のゲインの異なるV-I(電圧‐電流)変換回路で16種類の電流信号に変換した後、16個の電流スイッチで電流信号を(2の16乗、つまり65,536通りの中から)選択、I-V(電流‐電圧)変換アンプで電圧信号に戻されます。これらから、デジタル処理をしているのではないかとの誤解を招くことがあるのですが、〈AAVA〉はいかなる抵抗体も使わない”純粋なアナログボリューム”です。

一般的な音量調整は、入力信号を抵抗体で減衰させて、アンプで増幅するため、通常使用するボリューム位置ではインピーダンスが増加してしまい、どうしてもノイズが増えてしまいます。

一方〈AAVA〉は、音量を絞るのではなく必要なV-I変換回路を切り替えて、ダイレクトに音量(アンプのゲイン)を変える方式ですから、インピーダンスの変化やノイズなどの影響を受けません。

このため、ノイズの増加がほとんどなく、最も重要である実用音量レベルでの高SN比を維持することができ、周波数特性も変わらないため音質変化も起こらないのです。通常のボリューム調整では問題となる左右の連動誤差やクロストークも殆どありません。

この結果、限りなく静寂な空間に音楽のみが広がる、音楽再生における”プリアンプの理想像”を実現したのです。

■ 『 C-3900 』の主な先進仕様


@入力ポジションに対応した位相設定が可能
バランス接続の場合問題となる、入・出力の接続コネクターの極性を全ての入力ポジションで簡単に設定することができ、入力端子毎に位相の設定およびメモリーが可能です。

Aプリアンプのゲインを選択可能
アキュフェーズのパワーアンプとの組合せでは標準利得の18dBでいいのですが、海外製のパワーとの組合せではゲインの過不足が問題となる場合があります。本機は全体の利得を12dB/18dB/24dBの3種類から選択することができます。

Bプリント基板に、低誘電率・低損失の『 ガラス布フッ素樹脂基材 』を採用
信号伝送回路には、非常に高価で、非常に低い誘電率(絶縁体の誘電率が低いほど伝搬速度が早い)と誘電正接(小さいほど伝送損失が小さくなる)をもつ『 ガラス布フッ素樹脂基材 』を採用しています。本機ではさらに銅箔面に金プレートを施し、信頼性や音質の向上を図っています。

Cユニット・アンプ化した回路は左右独立構成、8mm厚硬質アルミの強靭な構造部に固定

本機の主なアンプ回路は、入力バッファー、AAVA、バランス出力、ヘッドフォーン・アンプなどの左右合計16ユニット・アンプ群で構成されています。これらのユニット・アンプは、相互干渉しないように8mm厚の硬質アルミによるフレーム構造により強固に保持され、電気的干渉、物理的振動を抑制しています。

D左右独立の高効率トロイダル・トランスによる、モノ・コンストラクション構成の理想電源

電源トランスに放熱フィン付き鋳造アルミケース入りの高効率トロイダル・トランスを2個採用。フィルター用アルミ電解コンデンサーには、新規開発による10,000μFの大容量・高音質タイプを12個搭載、これを2ブロックにして左右を独立させ、電源トランスとともにモノフォニック仕様の余裕ある電源部を構成しています。

アナログプリの最高峰として、高精度のボリューム・コントロールをベースに、全素材・パーツを極限まで吟味し、電気的特性の更なる向上と徹底した高音質を追求し、これまでにない音楽性の実現を目指したのです。

■ 『 C-3900 』の試聴記

6月某日、日本橋1ばん館にて『 C-3900 』の試聴を次のシステムで実施しました。

■Accuphase「DP-750」⇒『 C-3900 』⇒「A-75」⇒B&W「802D3」
※前作「C-3850」との比較試聴も行いました。

音出しの瞬間、その透明感に圧倒されました。音場が深く、どこまでも見通せる感じは、過去にオーディオシステムでは経験のないレベルでした。とにかく音数が多く、情報量の多さは圧倒的で、従来感じなかった録音スタジオのライブ感まで再現されたのには驚きました。

高域は実に伸びやかで艶やか、滲み感など全くなく、突き抜け感、弾け感は生楽器そのものでした。一方低域は張りがあって躍動的で、迫力や厚みは一際凄いのですが、まとわりつきや、もたつき感の全くない堂々としたものでした。

このように『 C-3900 』でのサウンドは素晴らしいの一語に尽きるのですが、聴いている内に音の細部の印象など、もうどうでも良くなって行くのでした。音そのものが楽しく、音楽がそこにあるのです。気が付くと、ソフトを取っ替え引っ替え聴いている自分がいました。

『 C-3900 』のサウンドのこの吹っ切れ感、生々しさは、国産の”雄”アキュフェーズが「オーディオでの音楽再生」において、ついに「音楽のエッセンスを引き出す《 何か 》を掴んだ」のではないかとさえ感じてしまう程でした。

『 C-3900 』こそ、アキュフェーズがこれまでに培ったプリアンプのノウハウの集大成であり、飽くなき挑戦を続けた渾身の自信作と言えるでしょう。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)