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JBLスタジオモニター「43シリーズ」の系譜。最新鋭『 4312G 』登場!!

2019.3.14

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
今回は、JBLスタジオモニター「43シリーズ」の系譜、JBL 3ウェイ スタジオモニタースピーカー『 4312G 』を取り上げます。

以前、JBL「L100 Classic」を取り上げた際にも書きましたが、私は学生時代(70年代初頭)スピーカーを選ぶにあたって、JBLのコンシューマ用「L100」にするか、プロ用「4311」にするか大いに悩んだ末、そのカッコ良さに惚れて「4311」の購入に至ったのでした。

プロ用で最も小型の「4310」(1971年発売)を原器として、「4311」(1973)、「4311A」(1976)、「4311B」(1979)と、「4311」が3代続きました。その後、「4312」(1982)となり、「4312A」(1986)、「4312XP」(1990)、「4312MK2」(1996)、「4312BMK2」(1999)、そして20世紀最後の年に「4312SX」(2000)、「4312D」(2004)、「4312E」(2010)、「4312SE※」(2016)と連綿と続いて来ました。(※JBL創立70周年記念スペシャルエディションモデル)

今回ご紹介します『 4312G 』は、先にリリースされた「L100 Classic」の開発で得られた数々のノウハウを「4312シリーズ」に移植した最新鋭機です。

■ 『 4312G 』のデザイン


「4310」から「4311」シリーズにかけてのユニット配置は、ウーファーが上にきて、アッテネーターと銘板が下部にくる、変則的なデザインでした。これはスタジオの天井近くに設置してモニターすることを前提に、レベル調整が可能なように配置したものでした。

しかし、私のようなホームユーズでも、そのカッコ良さに憧れ、そのままの形で設置して聴いていました。その後「4312」になってウーファーが下、アッテネーターが上の通常のスピーカーのスタイルになり、現在まで続いています。

■ 『 4312G 』のユニット構成


ウーファーは「Project K2 S5800」のために開発された、JBL史上最強の12インチ(300mm)ユニットともいわれる1200FE系ユニットをベースに、「4312SE」に用いられた《 1200FE-8W 》や、「L100 CLASSIC」の《 JW300PW-8 》の特徴を受け継ぎながら、最新技術により更なる低歪化を実現した《 JW300SW 》を搭載しています。コーン紙にはホワイト・ピュアパルプコーンを採用しています。

ミッドレンジは、125mm口径の新型コーン型《 JM125PC 》(4312SEとL100 CLASSICは105H-1)で、更なる低歪とフラットレスポンスを目的に開発され、少し光沢のあるポリマーコーティングが施されています。

ツイーターは、前作「4312SE」と同じ1インチドームツイーター《 054AlMg-1 》で、良好な超高域レスポンスを獲得するために開発されたアルミ−マグネシウム合金ダイアフラムと、強力なネオジム・マグネット採用

の25mm径ドームツイーターです。

ちなみに、「L100 CLASSIC」では明るく伸びやかなサウンドを狙って、ピュアチタン・ドームツイーターが採用されています。

■ 『 4312G 』の特徴

エンクロージャーは歴代モデルと全く同じ寸法(W362×H597×D305mm)の前面バスレフタイプで重量は25.2kgあり、これは記念モデル「4312SE」と同じですが、歴代モデルが20kg以下であったことからすると、かなり強化されてもいるようです。

そして、今時は珍しくなったミッドとハイのレベルアッテネーターも、従来機通り装備されています。リアのスピーカーターミナルも伝統的なシングルワイヤー仕様となっており、強度も上がっています。

「4312」シリーズは伝統的にウーファーをフルレンジ駆動してきており、本来の3ウェイ構成ではなく、フルレンジにミッドとハイを重ねる変則3ウェイとでも呼べるものでした。

過去に私もJBLのフルレンジ「D131」にツイーター「075」を加えたり、更にフォステクスのフルレンジを中域に使ったりした経験もありますが、出てくる音はウーファーが支配的になり、安定感のある豪快なサウンドでした。

これが「4312」シリーズ独特の立ち上がりの良さや吹っ切れ感、リアル感に繋がり、ジャズ・ポップス系のファンに支持されて来たのです。高域の伸びはあまり欲張らず、あくまで中域の厚みや充実感を狙った音作りに徹してきたのでした。

良い意味でのドンシャリが「4312」シリーズの持ち味ともいえます。

しかしハイレゾ音源の普及に伴い、やはり再生帯域の限界を感じていたのは私だけではなかったと思います。そこで前作の記念モデル「4312SE」では、初めてウーファーの上を640Hzでロールオフさせて、本当の意味での3ウェイ化を実現させたのでした。

また、高域も「4311」時代は15kHzまで、「4312」も「4312BMK2」までは20KHzまでと欲張ってはいませんでした。しかしハイレゾが云々が言われ出した2010年発売の「4312E」からは再生帯域を拡大し、ハイレゾにも対応可能な40kHzまでとしたのでした。

この結果、『 4312G 』では記念モデルとしてではなく、レギュラーモデルとして初めて広帯域再生を実現し、より幅広いジャンルに対応できるようになったといいます。

しかし、後述するように、本機が並の平凡な3ウェイスピーカーになってしまったのではなく、そこは伝統を大切にした音作りに徹しており、エネルギー感、押し出し感のある明るいサウンドが息づいています。

■日本橋1ばん館での試聴結果


手前から『 4312G 』「4312SE※」「4319」です。※試聴時には、まだ前作「4312SE」が店頭にありましたので、比較試聴しました。

まず第一印象は『 これぞJBLサウンド!! 』でした。私のようなかつての「4311」ユーザーにとっては、近年のJBLスピーカーには少々欲求不満気味なところもあったのです。それはオールマイティを狙うあまり、滑らかでフラットなサウンド傾向が強かったためで、かつてのじゃじゃ馬的な大らかさが影を潜めていたためでもあります。

『 4312G 』の音の張り出し感、鳴りっぷりの良さは抜群で、中域の厚みもたっぷりで最近のスピーカーでは珍しいものです。ただ、超低域や超高域はあまり欲張っておらず、音楽の美味しい部分を積極的に出そうとしていると思います。特に、ピアノやボーカルの生々しさは秀逸でした。これこそJBLスピーカーのDNAを受け継いだサウンドだと思います。

ちなみに「4312SE」に切り換えますと途端にハイファイ調になり、フォーカスがはっきりし、荒々しさのないスムーズなサウンドになりました。これはこれで優等生のJBLサウンドですが、私的には少々物足りなさも感じたのでした。

『 4312G 』の使いこなしのコツは、あえて最新の高純度SPケーブルや高剛性のSPスタンドを使う必要はなく、その方が本機の良さが生かされると思います。また、設置時ツイーターは必ず外側にくるように、アッテネーターの位置は真ん中にこだわらず、お部屋の状況に合わせて積極的にいじっていただきたいと思います。

そして、今やこのエンクロージャーサイズでは珍しい30cmウーファーならではの小音量時の痩せない低音も魅力的です。夜間のリスニングも楽しめそうです。

最後に駆動アンプとしては、ハイファイ一辺倒でなく音楽性を大事にした、マランツやラックスマンあたりのプリメインアンプとの相性が良いのでは?とも感じました。

『 4312G 』は、間違いなくJBLスタジオモニター「43シリーズ」の系譜です。

※ご注意:JBL『 4312G 』は1台の価格です。必ず左右(L/R)を1台ずつ計2台ご注文下さい。スピーカーユニットの配置が左右対称になっています。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)