カテゴリから選ぶ

完成度の高さと信頼感、そして何よりその歴史的価値が魅力のONKYO「D-77NE」

2015.3.5

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。
本日は、「何で今さら?」と言われそうですが、発売以来、予想以上に引き合いのあるONKYOの大型ブックシェルフスピーカー「D-77NE」を取り上げます。完成度の高さと信頼感、そして何よりその歴史的価値が魅力のスピーカーです!

  • ONKYO D-77NE

■シリーズ11世代目の「D-77NE」

ONKYOから、1985年の初代機が発売されて以来、実に30年、シリーズ11世代目となるロングセラーのスピーカーシステム「D-77」シリーズの最新モデル「D-77NE」が2014年12月に発売され、オンキョーとしては久々のヒット作となっています。

その理由はズバリ!「信頼感」&「安心感」だと考えます。そしてその購入者層は、D-77に歴史的価値を見出し、ご自身の若い日の憧れと、この「D-77」シリーズにある種の思い入れのある、シニア世代だと思われます。

■D-77NEのコンセプト

D-77NEのコンセプトは、《 MADE IN JAPANの本格的3ウェイスピーカーシステム 》です。30cm級ウーファーを搭載した、3ウェイ中型ブックシェルフ機は、最近でこそ非常に少数派となり、珍しい存在とはなっていますが、1980年代には、国内の殆どのオーディオメーカーや家電メーカーが、競って毎年のように製品を市場に投入していました。

そんな80年代のヒット作の中でも、ダイヤトーンの「DS-77」シリーズと覇を競った一方の雄が、ONKYO「D-77」シリーズだったのです。当時、「5・9・8戦争」とも言われ、約5年間にわたり熾烈な販売競争を繰り広げたのでした。

■D-77シリーズの系譜

1981年に「D-77」のオリジナルともいえる「D-7」が発売され、「D-7R」「D-7RX」と続いた後、第1世代の「D-77」が登場しました。

その後、ほぼ年1回のペースでマイナーチェンジによる新製品( D-77X(1986)、D-77XX(1987)、D-77XD(1988)、D-77XG(1989)、D-77FX(1990)、D-77FXII(1992)、D-77RX(1994)、D-77FRX(1996)、D-77MRX(2003) )が発売されました。そして、この度14年ぶりに「D-77NE」が登場したのです。

■第1世代 D-77の時代背景

D-77が登場した1985年は、CDが市場に投入されて3年という、まさにデジタルオーディオの黎明期にあたり、D-77シリーズは、当時からデジタル対応を標榜し、さまざまな新素材を振動板に採用して、軽量化と高剛性化を図っていました。

また、エンクロージャーも30cmウーファーのエネルギー(反作用)に負けない高剛性を目指した結果、超重量級のブラック仕様という、各メーカーの製品が同じような外観となってしまい、前述のダイヤトーンのように、型番まで似通ってしまうという、今から思えば異常事態であり、混乱期でもあったのです。

それ程まで、当時のオーディオ業界の繁栄と活況が、懐かしいとともに羨ましいとも感じるのは、私ひとりだけでしょうか。

■最新モデル D-77NEを探る

新製品のD-77NEは、数年前からオーディオショーでその試作機が何度もデモされており、「いつ発売されるのか?」、はたまた「試作機で終わってしまうのか?」と気にはしていたのですが、ついに昨年末発売にこぎ着けたのです。

小型2ウェイ・ブックシェルフや、スリムなトールボーイが全盛の昨今にあって、今となっては超の付くほど個性的なコンセプトで製品化がされたことに、ONKYOの勇気とやる気を感じるとともに、ある意味「国産オーディオは不滅だ!」との『歴史的価値』を主張しているようにも思えます。

オリジナルモデルのD-77から、ウーファーの振動板には、ピュアクロスカーボンや同社オリジナル素材のOMFが採用されてきましたが、本機ではONKYOの伝統的技術によるコルゲーション(同心円のプレス:補強溝)付きのノンプレスコーンを採用しています。ノンプレスのため、コーンの裏側(表面からは見えない)はミミズが這っているような状態とのことです。

D-77NEのノンプレスコーン イメージ図

それこそが、軽量かつ高剛性で適度な内部損失を実現するため、同社とっておきの理想的な振動板だということです。素材固有のノイズを飛躍的に低減するとともに、濁りのないピュアなサウンドを実現し、30cmウーファーならではの力強い・ダイナミックな低音再生が可能となったのです。

一方、12cmのスコーカーには、前作と同様、独自開発のシルクOMF(Onkyo Micro Fiber:シルク繊維と熱硬化性樹脂によるマトリクス構造で、軽量・高剛性・内部ロスの大きい素材)振動板を採用しています。

基本的な考え方は、80年代のD-77シリーズと同様で、ミッドレンジを大口径にすることで再生帯域を広げ、ウーファーへの負担をできるだけ軽くしているのです。スコーカーの後方にはバックチェンバー(別の部屋)が設けられており、ウーファーからの音圧を回避しています。

ツイーターには、25mmアルミニウム合金ドームと40mmバイオクロスコーンを組み合わせた複合振動板を採用。従来素材と新素材を絶妙に使い分け、同社がこれまで蓄積してきた、スピーカー作りのノウハウを生かしています。 30cmウーファーのフレームには高剛性のアルミダイキャストを採用し、8本のM8ボルトで締め付けることで、ウーファーの反作用を徹底的に抑えています。また、エンクロージャーは、MDF素材を6面全てに採用し、さらにフロントバッフルは2枚重ねることで強度を高めています。

側板には同社スピーカー「D-TK10」で採用された、ギター製造工法独特の「力木(ちからぎ)」を配置して、自然な響きを得るために、綿密なチューニングを施したとのことです。80年代のD-77シリーズをはじめ、当時の国産スピーカーシステムに見られるような、単に《 鳴き 》を排除するための高剛性化とは一線を画する最新技術が使われています。

ネットワークにも近年の手法が使われており、ネットワーク回路を3ユニットとし、リアバッフルへ分散配置することで相互干渉から逃れています。また、ツイーター用には、ドイツWIMA社製のフィルムコンデンサーを投入して、高音質化を図っています。スピーカー端子には、真鍮削り出し素材に金メッキ処理を施すことで、経年変化が少なく高導通性を確保したしっかりしたターミナルを採用しています。

D-77NEのスピーカー端子

■試聴しました

音質は、昨年11月に心斎橋で行われた「オーディオセッション」でじっくりと聴いていますが、改めて、日本橋1ばん館でもサウンドを確認しました。

・能率が90dBもあり、大口径のダイナミックで開放的なサウンドをお好みの方にはピッタリ。近年の国産には珍しい、低音楽器の厚み・重量感のあるサウンドは圧巻です。

・スコーカーのバックチェンバーが有効に働いており、モジュレーション(他のユニットからの影響)が少なく、非常に立ち上がりの良い中域を実現しています。

・中域から高域にかけての繋がりは秀逸で、全くクセを感じさせないナチュラルな質感で、音楽ジャンルを選びません。80年代のD-77シリーズのように、デジタル対応を意識するあまりの中高域の強調感はなく、ボーカルは温かく、弦楽器は滑らかで響きも自然なものでした。

■最後に

価格的にも、これだけのポテンシャルとその堂々とした存在感から、決して割高とは感じませんでした。

コンセプトである《 MADE IN JAPANの本格的3ウェイスピーカーシステム 》こそ国産オーディオの原点であり、このコンセプトに共感するオーディオファン・音楽ファンは多いはずです。ぜひ、導入をご検討ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん)